真夜中のピザは、食事というより、夜との和解に近い。 眠れない自分を責めずに、まだ起きている理由を少しだけ許してくれる。
時計は十二時を過ぎていた。 部屋の明かりは落としてあるのに、頭だけがまだ明るかった。 返信しなかったメール、言い返せなかった言葉、明日に回した仕事。 そういうものが、寝る前の静けさの中で、かえって大きく聞こえる夜だった。
外では雨が降っていた。 強い雨ではない。 窓に細かく当たり、街灯の光をにじませるような雨だった。 冷蔵庫を開けても、食べたいものは見つからない。 けれど空腹だけは、静かにそこにあった。 そのとき、ふとピザのことを思い出した。
真夜中に食べる一切れには、昼間の理屈では説明できないやさしさがある。
夜に届く温かいもの
夜遅くに温かいものが届くというだけで、少し救われることがある。 それは豪華な食事でなくてもいい。 箱の中に熱が残っていて、チーズがまだ少しやわらかくて、 生地の端がほんのり香ばしければ、それだけで十分だった。
インターホンの音は、昼間よりも少し大きく聞こえた。 玄関で箱を受け取り、静かにドアを閉める。 部屋に戻るまでの短い廊下で、箱の温度が手に伝わる。 誰かと話したわけではない。 それでも、世界と完全に切れていないことだけはわかった。
テーブルの上に箱を置き、ふたを開けた。 湯気はもう大げさには立たない。 けれど、トマトとチーズの匂いが、暗い部屋にゆっくり広がった。 その匂いは、今日を終わらせるための合図のようだった。
誰にも急かされない一切れ
真夜中のピザは、急がなくていい。 誰かに取り分ける必要もない。 会話の間を気にする必要もない。 熱いうちに食べなければ、と少し思いながらも、 その一切れを持ったまま、しばらく窓の雨を見ていてもいい。
昼間の食事には、役割がある。 朝食は一日を始めるため。 昼食は午後へ戻るため。 夕食は家族や生活を整えるため。 でも真夜中のピザには、はっきりした役割がない。 ただ、まだ起きている自分のそばにある。
その役割のなさが、ありがたかった。 正しい時間ではない。 健康的な選択でもないかもしれない。 それでも、今夜はこれでいい。 そう思わせてくれる食べ物が、ときどき必要になる。