仕事帰りのピザは、ごちそうというより、救助に近い。 何かを祝うためではなく、今日を無事に終えるために箱を開ける夜がある。
電車を降りたとき、もう夕食のことを考える力は残っていなかった。 駅の階段を上がり、スマートフォンの通知を見ないふりをして、 ただ家までの道を歩いた。 今日はよく働いた、というほど美しい一日ではなかった。 ただ、長かった。
冷蔵庫の中身は、帰る前からだいたいわかっていた。 使いかけの野菜、少し古くなった卵、何かを作ろうと思えば作れる材料。 けれど、作れることと、作りたいことは違う。 玄関の前に着いたとき、答えはもう決まっていた。 今夜はピザにしよう。
仕事帰りのピザは、努力を追加しない夕食です。
注文するだけで、少し楽になる
注文を終えると、まだ食べていないのに少し気持ちが軽くなった。 何を作るか考えなくていい。 まな板を出さなくていい。 鍋を洗わなくていい。 ただ、届くのを待てばいい。
仕事の日の夜は、選択が多すぎることがある。 返信するか、明日に回すか。 買い物に行くか、家にあるもので済ませるか。 洗濯するか、今日は見ないふりをするか。 その中で、ピザを頼むという選択は、少しだけ世界を小さくしてくれる。
飲み物を冷やし、部屋着に着替え、テーブルの上を少しだけ片づける。 それだけで十分だった。 完璧な夜にしなくていい。 ただ、食べる場所を作ればいい。
箱を開ける音
インターホンが鳴る。 玄関で受け取った箱は、思ったより温かかった。 その温かさが、なぜかありがたい。 誰かが自分のために作ったわけではない。 それでも、熱い食べ物が家に届くということには、小さな安心がある。
箱を開けると、湯気と香りが立った。 チーズ、トマト、焼けた生地。 そのわかりやすさが、疲れた頭にはちょうどよかった。 難しい味を読み解く余裕はない。 ただ、熱くて、塩気があり、手で持てるものが目の前にある。
最初の一切れを取る。 チーズが少し伸びる。 皿に置かず、そのまま少しかじる。 その瞬間、仕事の続きのようだった夜が、ようやく自分の時間に戻ってきた。