最初の一切れには、少しだけ勇気がいる。 それは、ピザを食べ始めるだけでなく、その場の時間を動かし始める一切れだからです。
箱がテーブルに置かれると、部屋の空気はすぐに変わった。 まだ誰も食べていないのに、もう少し明るい。 ふたを開けると、チーズの匂いとトマトの香りが広がり、 みんなの目が自然に同じ場所へ集まった。
けれど、すぐには誰も手を伸ばさない。 熱いからなのか、遠慮しているからなのか、それとも最初の一切れを取る人を待っているのか。 ほんの数秒、食卓に小さな間ができる。 その間こそ、ピザらしい時間だった。
最初の一切れは、空腹より先に、場の遠慮を切り分ける。
誰が最初に取るのか
家族の食卓なら、子どもが最初に取ることが多い。 誕生日なら主役。 友人同士なら、いちばん遠慮しない人。 仕事の集まりなら、誰かが「どうぞ」と言ってから、ようやく手が伸びる。
ピザは、すでに切られている料理です。 それなのに、最初の一切れだけは少しだけ特別に見える。 それは、一枚の円の中から、最初に空白を作る行為だからかもしれません。 誰かが一切れを取ることで、ピザは見た目にも「食べ始められたもの」になる。
その瞬間、ほかの人も安心する。 もう取っていい。 もう食べていい。 もうこの夜は始まっている。 最初の一切れは、みんなにそう知らせる合図なのです。
選ぶ一切れに性格が出る
最初にどの一切れを選ぶかにも、その人らしさが出る。 いちばんチーズが多い場所を選ぶ人。 具が落ちにくそうな一切れを選ぶ人。 端の焼き色がきれいなところを取る人。 小さめの一切れから始める人。
子どもは、好きな具材をよく見て選ぶ。 大人は、少し遠慮して小さめを取ることがある。 恋人同士なら、相手が選ぶまで待つこともある。 友人なら、「そこ狙ってたのに」と笑いながら言うこともある。
ピザの一切れは、ただの三角形ではない。 そこには、好み、遠慮、性格、関係が少しずつ乗っています。